プロメテア
出版情報
出版社America's Best Comics
掲載期間8月 1999年
『プロメテア』(原題: Promethea)とは、アラン・ムーア原作、J・H・ウィリアムズ3世(英語版)とミック・グレイ作画によるアメリカンコミック作品である。発行元はDCコミックスのインプリントであるアメリカズ・ベスト・コミックス(英語版)。オリジナルシリーズは1999年から2005年にかけて全32号が発行され、後に全5巻で単行本化された。2014年から2019年にかけて日本語版単行本全3巻が刊行された。
主人公ソフィー・バングズは科学が発達した架空のニューヨークに住む平凡な大学生だったが、あるとき人間の想像力の化身であるプロメテアを身に宿すことになり、黙示録の終末をもたらす使命を与えられる。神話的な女性ヒーローが活躍するスーパーヒーロー・コミックとして始まった本作だが、やがて魔術と神秘主義、スピリチュアリティと死後の世界(特に生命の樹)の解説書としての性格を帯び始め、人類の意識の解放による世界の変革を描いて幕を閉じる。また本作では、視覚表現と画法の面でも多岐にわたる実験が行われている。 ローマの統治下にある5世紀エジプトにおいて、キリスト教徒の集団が異教の魔術師の住居を襲う。魔術師は幼い娘プロメテアを砂漠に逃がし、古の神々に加護を祈る。プロメテアはトート=ヘルメース神によって現世から連れ去られ、「永遠に生きる物語」へと生まれ変わった[1]。 物語は20世紀末のニューヨークに移る。大学生ソフィー・バングズは多くの世紀をまたいで様々な物語に登場する「プロメテア」というキャラクターについて調べていた。作者の一人の未亡人バーバラ・シェリーを訪ねたソフィーは、密かに忍び寄ってきた怪物スミーに襲われる。危機一髪でソフィーを救ったのは、古代エジプト風の装束をまとって神秘の力をふるうバーバラだった。バーバラによると、ソフィーを狙ったのは「プロメテアの器」が継承されることを恐れた何者かだという。器となる人間は想像力を通じて自身にプロメテアを降臨させるのだった。執拗なスミーから身を隠しながら、老いて力を失ったバーバラはソフィーに望みを託し、プロメテアを詠んだ即興詩を作るよう指示する。ソフィーは詩の力でプロメテアに変身し、スミーを打ち破った[1]。 新しいプロメテアの誕生を察知してスミーを差し向けたキリスト教カルト集団〈寺院〉は、代々のプロメテアを「バビロンの姦婦」と呼び、黙示録の終末をもたらす者として敵視していた。バーバラはソフィーに想像力の使い方を身に付けさせるため、物質世界を離れた〈想像界〉の存在を教える。夢や物語、概念や神話的象徴が目まぐるしく行き交う世界にソフィーは驚嘆する。そこにはかつてプロメテアの器だった四人の死者が待っていた。彼らによると、想像力が持つ無尽蔵の可能性を人々に伝え、物質界に縛られた人間性を解放するのがプロメテアの役割だという。「だからプロメテアに脅威を感じる者がいるのです。彼女が表現するものを恐れているから[2]」歴代のプロメテアはタロット小アルカナのスートが象徴する「魔法の武器」、すなわち精神のあり方をソフィーに教えていく。杯(同情心)・剣(知性)・貨幣(肉体的存在)の意味が伝えられたところで[3]、〈寺院〉によって召喚されたゴエティアの悪魔が大軍勢を成して襲撃してくる。ソフィーは過去のプロメテアたちを現世に顕現させて立ち向かう。バーバラは戦いの中で杖のスートが象徴する意志の力をソフィーに伝え、命を落とす[4]。 バーバラは歴代のプロメテアのように現世を見守り続けるのではなく、亡夫スティーヴと再会するため想像界のさらに先へ旅立っていった。一念発起したソフィーは魔術師ジャック・ファウストの申し出を受け入れ、性交と引き換えに魔術の弟子となる。ファウストとの性交はそれ自体が秘儀の一部であり、ソフィーは魔術に開眼し始める[5]。またプロメテアの神器〈使者の杖〉と対話し、大アルカナが象徴する世界の歴史を学ぶ[6]。 十分な力をつけたソフィーは親友ステーシアに現世の責務を託し、バーバラを助けるためその後を追ってカロンの渡しに乗る[7]。
あらすじ
第1巻
第2巻「生命の樹(セフィロトの樹)」。ソフィーたちは11個のセフィラを毎号一つずつ巡りながら頂上を目指していく。